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「休みの残りを知りたい」と検索しても、社内資料の見出しが「年次有給休暇の残日数」だと、欲しいページを見つけにくいことがあります。同じことを言っているのに、使う言葉が違う。そんな場面で役立つのが、文章の意味の近さを使う検索です。
図書館で、題名が分からなくても「宇宙の話で、子どもにも分かる本」と相談すると候補を探してもらえますよね。ベクトル検索も、文字が完全に一致するかだけでなく、関連する意味を手掛かりに候補を探します。文章を数値の並びに変え、その近さを比べる仕組みです。
ただし、意味が似ている資料が、今の質問に正しいとは限りません。去年の規程や別の製品の説明も候補に入り得ます。この記事では言い換えの例から始め、近さの数値の読み方と、版や型番を確かめる必要性まで説明します。
この記事の目次
文章を数値の並びへ変えて、近さを比べる
ベクトルは、ここでは複数の数値を並べたものです。文章をその数値へ変える処理を埋め込み、英語でembeddingと呼びます。意味の近い文章が近い位置へ来るように学習されたモデルを使い、質問に近い資料を探します。
この数値は、人が決めた「料金は1、納期は2」の分類番号ではありません。モデルによって表現が異なるため、別の方式で作った質問と資料のベクトルを、そのまま同じものとして比べることはできません。
言い換えで探したい資料を、3件で考える
架空の社内資料を三つ用意します。Aは「端末を社外へ持ち出す場合は申請が必要」、Bは「ノートPCの購入費を精算する方法」、Cは「持出申請は不要という旧版の案内」です。質問は「ノートPCを家へ持って帰れる?」です。
単純にノートPCという語だけを探すとBが強く見える一方、意味で探せばAに近づくことが期待できます。しかしCも話題が近いため、旧版を除く条件がなければ候補へ入る可能性があります。これは仕組みを示す架空の例で、実在の埋め込みモデルの順位を測った結果ではありません。
「休みの残り」で探しても、候補は一つとは限らない
- 質問
今年使える有給休暇は、あと何日ありますか。
- 意味が近い資料
年次有給休暇の残日数を確認する手順。言葉が完全に一致しなくても関連する候補になる。
- 意味は近いが確認が必要な資料
旧年度の休暇規程。内容が似ていても、現在の制度に使えるとは限らない。
意味で探せると、正式名称を知らない人でも資料へ近づけます。一方、似た資料が見つかっただけで検索を終えると、古い規程を使う可能性があります。見つける段階と、使ってよいか確認する段階を分けるのが大切です。
数値の近さは「この答えが正しい確率」ではありません。導入時は、実際に聞かれる質問と正しい資料を数組用意して、目的の資料が候補に入るか、古い版が混ざらないかを確かめましょう。
| 資料 | 質問との関係 | 必要な追加確認 |
|---|---|---|
| A 持出には申請が必要 | 意図に合う規程 | 適用日と対象端末 |
| B PC購入費の精算 | PCという単語は一致 | 質問の目的が違う |
| C 持出申請は不要・旧版 | 話題は近い | 旧版なので通常検索から外す |
近さの数値は、正しい確率ではない
近さを比べる指標には、コサイン類似度などがあります。コサイン類似度は、二つのベクトルの向きがどれくらい近いかを見る方法です。たとえば説明用のベクトル[1,0]と[0.8,0.2]は約0.970、[1,0]と[0,1]は0です。これは手で置いた二次元の数値の計算で、文章をモデルで変換した実測ではありません。
類似度0.97だから97%正しい、とは解釈できません。検索の指標や値の範囲は実装によっても異なります。一定の数値だけで採用せず、実際の質問で必要な資料が上位へ出るかを見ます。
型番や否定は、ほかの条件でも守る
A001とA002のように一文字違う商品コードを正確に探すなら、完全一致の検索が重要です。「利用可」と「利用不可」のような否定も、話題の近さだけで判断してはいけません。日付、対象部署、利用者の権限などは、検索前後の条件で絞ります。
キーワード検索とベクトル検索を組み合わせる方法を、ハイブリッド検索と呼ぶことがあります。さらに候補を並べ直す再ランキングを使う構成もありますが、部品を足せば必ず良くなるわけではありません。最初は何を取りこぼしているのかを見て、必要な部分を足します。
| 探したいもの | ベクトル検索で期待すること | 併用する確認 |
|---|---|---|
| 同じ意味の言い換え | 表現違いを拾う | 正解資料との照合 |
| 型番A001 | 関連する説明を探す | コードの完全一致 |
| 利用禁止の規程 | 同じ話題の規程を探す | 否定・例外条文を読む |
| 今月の料金 | 料金資料を探す | 版・適用日を絞る |
| 社内の機密資料 | 閲覧可能な候補を探す | 利用者のアクセス権を守る |
検索結果だけを、先に採点する
AIの回答まで一度に評価すると、資料が取れていないのか、取れたのに読み間違えたのかが分かりにくくなります。まず、答えの根拠となる資料が検索上位に入ったかを確認します。その後に生成された返答を見ます。
架空の規程なら、持出可否、申請手順、対象外の端末、旧版の日付などで質問を作れます。正解資料、検索で出た資料、取りこぼした条件を表に残します。「だいたい似た内容が出た」だけで成功としないことが、社内で使える検索に近づく第一歩です。
正解集を作った後に、検索・RAG・回答評価を一つのアプリへ組み込みたいなら、下の開発者向け書籍も候補です。数値が近いことと答えが正しいことを分ける考え方を、全体設計へ広げたい人に向きます。
最初に用意するのは、大きなデータベースより正解集
まずは代表的な資料と質問を少数選び、どの文書が答えの根拠になるかを人が確認します。保存先や検索基盤を選ぶのは、資料の量、更新頻度、権限、必要な待ち時間が分かってからでも遅くありません。
取り出した段落の前後が足りない場合はRAGのチャンクサイズの考え方へ。検索結果を回答へ使う全体像はRAGとファインチューニングの比較で確認できます。
よくある疑問を、ここで。
使い始める前に、気になるところから。
類似度は正答率ですか?
いいえ。近さを表す指標であり、答えが正しい確率ではありません。実際の質問と正解資料で評価します。
キーワード検索は不要になりますか?
不要にはなりません。型番や固有名詞の正確な一致、日付や権限の条件などと組み合わせて考えます。
違う埋め込みモデルを混ぜられますか?
基本的には同じ表現として扱えません。モデルを変えるときは、資料側の再変換と検索品質の再評価を検討してください。
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