社内の規程や商品情報をAIへ覚えさせたい。そんな相談では、RAGとファインチューニングという二つの言葉がよく出てきます。でも、変えたいものが最新の情報なのか、答え方なのかで選び方は違います。まずは小さな資料で試し、本当に追加の仕組みが必要かを判断しましょう。
この記事の目次
その場で資料を足すか、モデルを調整するか
RAGはRetrieval-Augmented Generationの略です。質問に関係する資料を検索して取り出し、その内容を生成AIへ渡す方法です。モデルの内部をその都度学習し直すわけではありません。参照する資料が回答時の根拠になります。
ファインチューニングは、追加の学習データでモデルの重みを調整する方法です。重みとは、モデル内部にある計算上の数値です。特定の形式や振る舞いへ寄せたい場合などに検討されますが、最新情報の更新、権限管理、根拠表示が自動的に解決するわけではありません。
「料金が変わる」と「返答の形をそろえる」は別の問題
架空の社内規程で、出張の宿泊費上限が12,000円から15,000円へ変わったとします。変えたいのは情報の内容です。承認済みの新版を回答時に参照させ、旧版を通常の検索対象から外す方法が考えやすくなります。
一方、情報は合っているのに、毎回長文になってしまい、社内の「結論・根拠・確認待ち」という形式へそろえたいとします。最初に指示と見本で調整し、それでも大量の同種作業で課題が残る場合に追加学習を検討します。
両方が必要なケースもあります。形式を調整したモデルへ、最新規程を検索して渡す構成です。ただし、組み合わせれば運用対象も増えるため、初めから両方を作る理由はありません。

| 困りごと | 最初に試す方法 | 確認すること |
|---|---|---|
| 資料が数枚しかない | 直接添付やプロジェクト | 必要な箇所を読めるか |
| 最新版の規程で答えたい | 版管理した資料参照・RAG | 検索結果に新版が出るか |
| 形式をそろえたい | 固定指示とFew-shot | 別の入力でも形式が守られるか |
| 多数の例で振る舞いを調整したい | 評価を用意して追加学習を検討 | 費用・改善量・更新の手間 |
RAGは、検索で根拠を落とすと答えも崩れる
資料を登録しただけで正しく検索されるとは限りません。通常上限の段落だけ取り出し、例外地域の段落が抜ければ、回答は間違います。新旧の規程を同じ重みで検索してしまう問題もあります。
このため、AIの最終回答より前に、検索された資料とその版を確認します。必要な条文が検索結果に入っていないなら、指示文だけ直しても根本の対処になりません。資料の分割、検索条件、権限や版の絞り込みを見直します。
追加学習は、間違った見本も覚えさせかねない
学習用のデータへ、矛盾した正解や古い対応方針が混ざっていると、望んだ方向へ改善するとは限りません。データを作る作業、品質確認、学習後の評価、更新時の運用まで含めて検討します。
特に、学習に使った例へ正しく答えられることと、初めての入力へ正しく答えられることは別です。学習用と評価用のデータを分け、追加学習前の指示だけの方法とも比較してください。既定モデルで十分なら、維持する仕組みを増やす必要はありません。
同じ規程で、通常・例外・未記載を確かめる
評価用に、通常の宿泊上限、指定地域の例外、規程にない海外出張の三つを用意します。答えだけでなく、参照した条文と、未記載の条件を勝手に補わないことを確認します。以下は構成選定用の架空の確認表です。
| 質問 | 確認用の答え | 失敗の見分け方 |
|---|---|---|
| 通常地域の上限は? | 通常条文の金額 | 旧版を参照していないか |
| 指定地域Aでは? | 例外条文の金額 | 通常条文だけで答えていないか |
| 海外出張では? | 規程にないため確認が必要 | 国内規程から推測していないか |
| 改訂後の日付では? | 適用日の条件を確認 | 日付を無視していないか |
判断材料は、費用と更新の手間まで含める
比較する費用には、モデル利用だけでなく、検索用の保存先、資料の更新、回答の監査も入ります。追加学習なら、データ整理と学習の再実行も必要です。「導入費が安い」だけで選ぶと、毎月の更新作業で困ることがあります。
検索の基礎はベクトル検索の具体例へ。資料の切り方で迷う場合はRAGのチャンクサイズで、例外条文が落ちる原因を確認できます。まだ少数の資料ならChatGPTプロジェクトから試してください。
よくある疑問を、ここで。
使い始める前に、気になるところから。
RAGの方が必ず正確ですか?
検索で必要な資料を取り出せるか、モデルがそれを正しく使えるかによります。資料を登録しただけで正確さは保証されません。
社内情報を覚えさせるなら追加学習ですか?
必ずしもそうではありません。更新される資料や根拠を示したい情報は、回答時に参照させる方法を先に検討します。
RAGと追加学習は併用できますか?
できます。ただし、指示や少量の資料添付で解決するかを確認し、必要な部分だけ増やす方が運用を把握しやすくなります。
出典と、この記事について
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