忙しいのに、何に時間がかかっているのか説明しづらい。業務の棚卸しは、その状態を仕事ごとの記録へ変える作業です。最初から全部の仕事を細かく計測せず、一週間、何を・何回・どのくらい行ったかを残します。架空の受注担当の例を集計し、数字を見た後に何を減らすかまで考えます。
この記事の目次
棚卸しの目的を一つ決める
人を増やしたい、引き継ぎたい、残業を減らしたい。同じ棚卸しでも、目的によって必要な記録は変わります。今回は「受注担当の一週間を見て、手戻りや重複を減らす候補を見つける」ことに絞ります。
担当者を評価するための細かな監視表から始めると、記録すること自体が負担になります。まず一週間だけ試し、どの仕事に時間がかかるかと、何で止まるかを見ます。
月末だけの仕事や年に一度の仕事は、この一週間には出ません。週の記録にないものをゼロとして扱わず、別欄に頻度と発生時期を残します。一週間の結果だけで年間の人員や業務量を決めないでください。
仕事の大きさと、時間の単位をそろえる
「受注処理」と「メールを開く」が同じ一覧に混ざると、比較しにくくなります。始まりと完了が分かる仕事のまとまりでそろえ、その中で特に時間がかかる作業だけを細かく見ます。
一回の時間と一週間の合計を混同しないよう、欄の名前に単位を入れます。「30」だけでは30分か30回か分かりません。回数は実際に行った回数、時間は見積もりなら見積もりと分けます。
待ち時間も扱いを決めます。回答を待つ二時間の間に別の仕事ができるなら、二時間すべてを作業時間として足すと二重計上になります。手を動かした時間と、完了までの経過時間は分けて記録してください。
返答待ち2時間を、そのまま2時間分の仕事にしない
たとえば10時に確認を依頼し、12時に返答が来たとします。依頼文の作成5分、返答の確認5分で、その間は別の仕事をしていたなら、手を動かした時間は10分、完了までの経過時間は2時間です。両方を同じ「作業時間」の合計へ足すと、仕事を多く数えてしまいます。
一方、相手の返答がないため次の工程が止まった事実は、10分という数字だけでは伝わりません。備考へ「返答まで2時間、次の出荷依頼は保留」と残せば、作業の効率と、仕事が進む速さを分けて改善できます。
| 記録するもの | 架空例 | 何の改善に使うか |
|---|---|---|
| 手を動かした時間 | 依頼5分+確認5分=10分 | 作成や確認の手間 |
| 経過時間 | 10時依頼→12時返答=2時間 | 承認待ち・回答待ちの流れ |
| 別の仕事の時間 | 待っている間に行った仕事へ記録 | 重なる時間の二重計上を防ぐ |
一週間の架空例を、分と時間で集計する
次の表は実在する会社の実績ではありません。計算と判断の流れを説明するための架空例です。一回の時間に回数を掛け、同じ分の単位で合計してから時間へ直しています。
記録できた仕事は合計1,080分、18時間です。週40時間勤務の例として見るなら、残り22時間は未記録の仕事などを確認する余地であって、そのまま空き時間とは呼べません。記録漏れの可能性もあります。
| 仕事 | 一回の分数 | 週の回数 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 受付票の確認 | 30分 | 5回 | 150分 |
| 管理表への転記 | 40分 | 5回 | 200分 |
| 数量違いの確認 | 15分 | 10回 | 150分 |
| 出荷担当への連絡 | 20分 | 5回 | 100分 |
| 資料を探す | 10分 | 15回 | 150分 |
| 定例会議 | 30分 | 3回 | 90分 |
| 週次集計 | 120分 | 1回 | 120分 |
| 手順書の更新 | 120分 | 1回 | 120分 |
| 合計 | — | — | 1,080分=18時間 |
時間が長い仕事と、減らせる仕事は同じではない
数量違いの確認に150分かかっているからといって、確認をなくすと誤出荷につながるかもしれません。先に、なぜ数量違いが起きるのか、どの時点で見つかるのかを調べます。必要な確認を消すより、入力の重複や伝達のずれを減らせないか考えます。
資料を探す150分は、置き場所が統一されていないのか、名前が分からないのかで対策が違います。検索に時間がかかった事例を数件見て、原因を確かめます。全員へ新しい検索ツールを買う前に、フォルダや名前を整える余地があります。
一方、手順書の更新120分は、一時的に必要な仕事かもしれません。毎週続くと決めつけず、初回の整備と普段の更新を分けて記録します。大きい数字を並べて削減候補にするだけでは、仕事の役割を見落とします。
やめる・残す・詳しく調べる、の三つに分ける
集計の次は、仕事ごとに目的と使っている人を確認します。誰も使っていない二重の集計なら停止候補、出荷前の数量照合なら残す仕事、理由が分からない待ちなら追加調査、というように判断します。
停止候補でも、担当者が独断でやめるのではなく、その結果を受け取っている相手に確認します。たまに使う報告や、別工程の確認に使う資料もあるためです。
改善を試す対象は、一度に一つか二つで十分です。全部の仕事を変えると、どの変更で良くなったかも、どこで困ったかも分かりづらくなります。
| 対象 | 判断 | 次に確かめること |
|---|---|---|
| 資料を探す | 詳しく調べる | 探せなかった資料を3件集め、置き場所と名前を確認 |
| 数量の照合 | 残す | 差が生まれた入力経路を確認 |
| 重複した週次一覧 | 停止を相談 | 同じ数字を受け取る担当者に用途を確認 |
| 手順書の更新 | 分けて記録 | 初回整備と定期更新の時間を分ける |
記録表は、一週間だけ使って見直す
配布表は空欄版と上の計算例を用意しています。回数と一回の分数を入れ、週合計を確認できます。実際の記録で使う場合は、見積もり値と計測した値を同じ列で混ぜず、備考へ区別を残してください。
記録が面倒で続かないなら、仕事の区切りが細かすぎるかもしれません。五分ごとの全行動を残すより、まとまった仕事を終えたときに記入する方法を試します。何のために記録するかから外れないようにします。
業務の内容が個人情報や顧客情報を含む場合は、共有範囲を決めます。棚卸し表に必要なのは仕事の種類と負担であり、顧客の詳細をそのまま書き込む必要は通常ありません。
空欄版では、最初に仕事名、一回の分数、週の回数を入れます。たとえば「管理表への転記・40分・5回」で週200分です。合計を見た後は、備考へ「同じ数字を別の表にも入力している」など原因の候補を残します。長い行を選ぶだけでなく、次に見に行く作業が決まれば、表を作った意味があります。
改善案は、実績と期待を分けて提案する
たとえば資料探し150分が見つかったとしても、新しいフォルダ構成でその全てがなくなるとは限りません。「試した後に何分かかったか」を同じ範囲で測る必要があります。
業務改善の提案書の記入例では、この架空データを使い、期待する削減と実際の費用を分けて説明します。整理する対象が決まったら共有フォルダの整理へ進めます。
最初の成果は、大きな削減率ではなく、何が分かり、次に何を確かめるかが決まることです。一週間の記録を、仕事をなくすためだけでなく、残すべき仕事を説明する材料にも使ってください。
よくある疑問を、ここで。
使い始める前に、気になるところから。
一週間の記録だけで十分ですか?
最初の改善候補を探す入口には使えますが、月末・繁忙期・年次業務は別に確認します。一週間に出なかった仕事をゼロとしたり、年間の負担へ単純に引き伸ばしたりしないでください。
返答を待つ時間も作業時間に入れますか?
待っている間に別の仕事ができるなら、手を動かした時間と経過時間を分けます。重なる時間を両方の作業に足さないよう、集計する時間の意味を先に決めます。
集計したらすぐ自動化した方がよいですか?
先に目的、入力の重複、使われていない報告、必要な確認を見ます。やめられる仕事や保存場所の整理で済む仕事もあり、ツールの導入を最初の答えにしません。
出典と、この記事について
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