忙しいのに、何に時間がかかっているのか説明しづらい。業務の棚卸しは、その状態を仕事ごとの記録へ変える作業です。最初から全部の仕事を細かく計測せず、一週間、何を・何回・どのくらい行ったかを残します。架空の受注担当の例を集計し、数字を見た後に何を減らすかまで考えます。

この記事の目次
01

棚卸しの目的を一つ決める

人を増やしたい、引き継ぎたい、残業を減らしたい。同じ棚卸しでも、目的によって必要な記録は変わります。今回は「受注担当の一週間を見て、手戻りや重複を減らす候補を見つける」ことに絞ります。

担当者を評価するための細かな監視表から始めると、記録すること自体が負担になります。まず一週間だけ試し、どの仕事に時間がかかるかと、何で止まるかを見ます。

月末だけの仕事や年に一度の仕事は、この一週間には出ません。週の記録にないものをゼロとして扱わず、別欄に頻度と発生時期を残します。一週間の結果だけで年間の人員や業務量を決めないでください。

02

仕事の大きさと、時間の単位をそろえる

「受注処理」と「メールを開く」が同じ一覧に混ざると、比較しにくくなります。始まりと完了が分かる仕事のまとまりでそろえ、その中で特に時間がかかる作業だけを細かく見ます。

一回の時間と一週間の合計を混同しないよう、欄の名前に単位を入れます。「30」だけでは30分か30回か分かりません。回数は実際に行った回数、時間は見積もりなら見積もりと分けます。

待ち時間も扱いを決めます。回答を待つ二時間の間に別の仕事ができるなら、二時間すべてを作業時間として足すと二重計上になります。手を動かした時間と、完了までの経過時間は分けて記録してください。

03

返答待ち2時間を、そのまま2時間分の仕事にしない

たとえば10時に確認を依頼し、12時に返答が来たとします。依頼文の作成5分、返答の確認5分で、その間は別の仕事をしていたなら、手を動かした時間は10分、完了までの経過時間は2時間です。両方を同じ「作業時間」の合計へ足すと、仕事を多く数えてしまいます。

一方、相手の返答がないため次の工程が止まった事実は、10分という数字だけでは伝わりません。備考へ「返答まで2時間、次の出荷依頼は保留」と残せば、作業の効率と、仕事が進む速さを分けて改善できます。

同じ場面を、目的に合わせて二つの時間で記録
記録するもの架空例何の改善に使うか
手を動かした時間依頼5分+確認5分=10分作成や確認の手間
経過時間10時依頼→12時返答=2時間承認待ち・回答待ちの流れ
別の仕事の時間待っている間に行った仕事へ記録重なる時間の二重計上を防ぐ
04

一週間の架空例を、分と時間で集計する

次の表は実在する会社の実績ではありません。計算と判断の流れを説明するための架空例です。一回の時間に回数を掛け、同じ分の単位で合計してから時間へ直しています。

記録できた仕事は合計1,080分、18時間です。週40時間勤務の例として見るなら、残り22時間は未記録の仕事などを確認する余地であって、そのまま空き時間とは呼べません。記録漏れの可能性もあります。

一週間の架空記録。時間は作業時間
仕事一回の分数週の回数合計
受付票の確認30分5回150分
管理表への転記40分5回200分
数量違いの確認15分10回150分
出荷担当への連絡20分5回100分
資料を探す10分15回150分
定例会議30分3回90分
週次集計120分1回120分
手順書の更新120分1回120分
合計1,080分=18時間
05

時間が長い仕事と、減らせる仕事は同じではない

数量違いの確認に150分かかっているからといって、確認をなくすと誤出荷につながるかもしれません。先に、なぜ数量違いが起きるのか、どの時点で見つかるのかを調べます。必要な確認を消すより、入力の重複や伝達のずれを減らせないか考えます。

資料を探す150分は、置き場所が統一されていないのか、名前が分からないのかで対策が違います。検索に時間がかかった事例を数件見て、原因を確かめます。全員へ新しい検索ツールを買う前に、フォルダや名前を整える余地があります。

一方、手順書の更新120分は、一時的に必要な仕事かもしれません。毎週続くと決めつけず、初回の整備と普段の更新を分けて記録します。大きい数字を並べて削減候補にするだけでは、仕事の役割を見落とします。

06

やめる・残す・詳しく調べる、の三つに分ける

集計の次は、仕事ごとに目的と使っている人を確認します。誰も使っていない二重の集計なら停止候補、出荷前の数量照合なら残す仕事、理由が分からない待ちなら追加調査、というように判断します。

停止候補でも、担当者が独断でやめるのではなく、その結果を受け取っている相手に確認します。たまに使う報告や、別工程の確認に使う資料もあるためです。

改善を試す対象は、一度に一つか二つで十分です。全部の仕事を変えると、どの変更で良くなったかも、どこで困ったかも分かりづらくなります。

架空例から決める次の行動
対象判断次に確かめること
資料を探す詳しく調べる探せなかった資料を3件集め、置き場所と名前を確認
数量の照合残す差が生まれた入力経路を確認
重複した週次一覧停止を相談同じ数字を受け取る担当者に用途を確認
手順書の更新分けて記録初回整備と定期更新の時間を分ける
07

記録表は、一週間だけ使って見直す

配布表は空欄版と上の計算例を用意しています。回数と一回の分数を入れ、週合計を確認できます。実際の記録で使う場合は、見積もり値と計測した値を同じ列で混ぜず、備考へ区別を残してください。

記録が面倒で続かないなら、仕事の区切りが細かすぎるかもしれません。五分ごとの全行動を残すより、まとまった仕事を終えたときに記入する方法を試します。何のために記録するかから外れないようにします。

業務の内容が個人情報や顧客情報を含む場合は、共有範囲を決めます。棚卸し表に必要なのは仕事の種類と負担であり、顧客の詳細をそのまま書き込む必要は通常ありません。

空欄版では、最初に仕事名、一回の分数、週の回数を入れます。たとえば「管理表への転記・40分・5回」で週200分です。合計を見た後は、備考へ「同じ数字を別の表にも入力している」など原因の候補を残します。長い行を選ぶだけでなく、次に見に行く作業が決まれば、表を作った意味があります。

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08

改善案は、実績と期待を分けて提案する

たとえば資料探し150分が見つかったとしても、新しいフォルダ構成でその全てがなくなるとは限りません。「試した後に何分かかったか」を同じ範囲で測る必要があります。

業務改善の提案書の記入例では、この架空データを使い、期待する削減と実際の費用を分けて説明します。整理する対象が決まったら共有フォルダの整理へ進めます。

最初の成果は、大きな削減率ではなく、何が分かり、次に何を確かめるかが決まることです。一週間の記録を、仕事をなくすためだけでなく、残すべき仕事を説明する材料にも使ってください。

QUICK ANSWERS

よくある疑問を、ここで。

使い始める前に、気になるところから。

一週間の記録だけで十分ですか?

最初の改善候補を探す入口には使えますが、月末・繁忙期・年次業務は別に確認します。一週間に出なかった仕事をゼロとしたり、年間の負担へ単純に引き伸ばしたりしないでください。

この記事の内容をもとにした、編集部からの提案です。
返答を待つ時間も作業時間に入れますか?

待っている間に別の仕事ができるなら、手を動かした時間と経過時間を分けます。重なる時間を両方の作業に足さないよう、集計する時間の意味を先に決めます。

この記事の内容をもとにした、編集部からの提案です。
集計したらすぐ自動化した方がよいですか?

先に目的、入力の重複、使われていない報告、必要な確認を見ます。やめられる仕事や保存場所の整理で済む仕事もあり、ツールの導入を最初の答えにしません。

この記事の内容をもとにした、編集部からの提案です。
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