「この仕事、もっと楽にできるのに」と思っても、提案書になると話が大きくなってしまう。新しいツールの紹介を並べる前に、今どこで時間がかかり、何を変え、いつ結果を見るかを一枚にまとめてみましょう。受注情報の転記を例に、効果を盛らずに伝える書き方を紹介します。

この記事の目次
01

最初に書くのは「何を承認してほしいか」

新しいツールの機能を説明するだけでは、読み手が何を決めればよいのか分かりません。「2週間、転記の手順を変えて試すこと」「担当者二人の準備時間を確保すること」のように、今回の依頼を具体的に書きます。全社導入の承認と小さな試行は別です。

表題も「業務改革について」より「受注情報の二重転記を減らす試行の提案」の方が、困りごとと変更範囲が伝わります。目的を絞れば、導入しない選択肢とも比較しやすくなります。

根拠は担当者の印象だけでなく、回数、所要時間、確認待ち、やり直しを短い期間でも記録します。まだ測っていないなら「推定」と書き、測定する期間を提案に含めてください。数字を入れるために都合のよい実績を作らないことが大切です。

02

架空の転記作業で、効果と負担を並べてみる

ここでは業務棚卸し表にある架空の仕事を使います。受付票から管理表への転記が1日40分、週5回で週200分。これを一度の入力へそろえることで、1日20分まで減らせると仮定します。実測した改善結果ではありません。

差は週100分です。4週間で見ると400分、約6時間40分になります。「毎月6時間40分」とすると月ごとの営業日数を無視するので、この例では4週間の見込みと表現します。繁忙期と通常期でも条件は変わります。

準備に6時間、説明に2時間、試行中の問い合わせ対応に1時間かかると仮定すると、初期負担は9時間です。週100分がそのまま減り、追加の維持負担がなければ、時間だけの単純な回収は約5.4週間です。計算どおりに効果が続く保証ではありません。

効果と導入負担の記入例(すべて仮定)
項目条件計算結果
現在の転記40分×5日200分/週
変更後の転記20分×5日100分/週
減らせる時間200−100分100分/週
4週間の見込み100分×4週400分
初期の作業準備6+説明2+対応1時間9時間
時間だけの回収540分÷100分約5.4週
03

時間が浮くことと、経費が減ることを分ける

週100分を減らせても、従業員の給与や外注費がその分減るとは限りません。「人件費を削減」と断定せず、「確認や顧客対応へ回せる時間の見込み」と書けば、実際の使い道を話し合えます。残業や外注が減る場合も、契約や業務の条件を確認してから金額へ直します。

金額を比較するなら、初期費用・月額費用・追加ユーザー料金・保存容量・解約時のデータ取り出しまで含めます。無料枠だけで始められても、対象人数や保存量を超えた時にいくらになるかは確認が必要です。

時間単価を置く場合は、その単価の根拠と対象者を明記します。売上単価をそのまま従業員の作業時間へ掛けたり、同じ時間を「転記削減」と「確認削減」で二度足したりしないようにしましょう。

効果の欄で、書いてよいことを分ける
観測・見込み提案書での表現
まだ計測していない週100分減らせる仮定。試行で確認する
作業時間だけ減った確認や顧客対応に回せる時間が増えた
残業や外注の支払いも減った実際の支払差を根拠に経費の減少を示す
別工程の手間が増えた増えた手間も含め、全体の差を示す
04

変更しない案も含めて比べる

提案する案だけを詳しく書くと、導入が先に決まっているように見えます。現状維持、入力ルールの統一、専用サービスの導入など、実行できる範囲の案を同じ条件で比較します。機能の多さより、今回の困りごとをどれだけ解消できるかで見ます。

今回の例では、まず既存の管理表を正本に決め、転記元と承認の流れを整理する案が候補です。複数人で同時に編集する必要がある場合は、使っているExcelと保存先が共同編集の条件に合うかも確かめます。新しい契約が必要かは、その確認後に判断できます。

「運用で何とかする」案にも担当者の負担はあります。入力ルールを知らせる時間、旧ファイルを整理する時間、問い合わせ対応も書くと、有料ツールとの比較が公平になります。

05

「効率化したい」を、承認できる依頼に書き換える

「新しいツールを入れて効率化します」では、費用も範囲も分かりません。この例なら「受注担当2人で、既存の管理表へ入力を一本化する方法を2週間試したい。準備と説明に計9時間を見込む」と書きます。何を買うかより先に、今回任せてほしい範囲を伝えます。

続けて「転記・確認の合計時間と数量修正の件数を記録し、確認漏れを増やさず時間が減るかを見る。問題があれば旧手順へ戻す」と書けば、試行後の判断も見えます。効果の数字がまだない場合は、この計測を提案の一部にできます。

時間が減らなかった場合も、単に失敗と書かず、転記が減った分だけ確認が増えたのか、そもそも件数が違ったのかを残します。その結果によって、次に入力機器を変えるのか、承認の流れを直すのかが変わります。

06

試す期間と、続ける条件を先に決める

試行は、対象の仕事・担当・期間を狭くします。架空の例なら、受注担当二人の通常案件で2週間実施し、転記時間と数量の修正件数を記録する、という形です。例外案件を除く場合は、その件数と理由も残します。

変更前と変更後の時間は、同じ仕事の範囲で測ります。転記だけ速くなっても、確認や修正へ時間が移っただけかもしれません。件数が違う日は合計時間だけで比較せず、一件当たりの時間と、難しい案件が多かったかも見ます。

継続条件は「速くなったら」では曖昧です。「確認漏れを増やさず、通常案件の転記と確認の合計時間が減ったか」など、品質も含めて決めます。期待した効果が出なければ元の手順へ戻せるよう、旧データを安全に残し、戻す担当を決めておきます。

07

一枚の提案書にまとめる

Wordひな形には、今回の転記改善の記入例と空欄版を入れています。依頼事項、現状、変更案、費用と手間、試行、判定の順です。細かい計算や調査資料は別紙へ置き、提案書から出典をたどれるようにします。

読み手が知りたいのは、ツールの全機能ではなく「現場が回るか」「いくらかかるか」「失敗したら戻せるか」です。導入後の責任者、困った時の連絡先、情報の扱いも短く書いてください。

承認を受けたら、決まった担当と期限をタスク管理表へ移し、採用した手順を業務マニュアルに残します。提案書だけを保存して、実際の仕事へつながらない状態を避けましょう。

PROBEFOLIOが配布する編集用Word資料の記入例。架空の業務を記入したページ。
配布するWord提案書の記入例。時間の短縮は仮定で、実在の会社で得た効果ではありません。画像を大きく見る ↗(新しいタブで開きます)
無料の編集用資料 · DOCX業務改善 提案書 書き方|Wordの記入例とひな形登録不要でダウンロードできます。記入例は架空の業務です。職場の条件に合わせて編集してください。登録不要 · 38 KB
08

機器の購入は、詰まっている作業が見えてから

紙を一枚ずつ見て入力することが負担なら、先に紙のPDF化を検討できます。画面を行き来して転記しているなら、サイズ違いのデュアルモニターで、今の画面を残せる組み合わせも確認できます。

どちらも、買えば業務改善が完成するものではありません。作業の流れを変えた後に残る負担を減らす道具として選び、試行で確認したいことを購入前に決めておくと、費用の説明もしやすくなります。

QUICK ANSWERS

よくある疑問を、ここで。

使い始める前に、気になるところから。

決まった提案書の書式がありません。何から書けばいいですか?

今回承認してほしいことを最初に書き、現状・変更案・手間と費用・試行後の判定を続けます。数字が未計測なら推定と示し、測定する計画を入れてください。

この記事の内容をもとにした、編集部からの提案です。
改善の効果を金額で出す必要はありますか?

金額に直せる根拠がなければ、まず作業時間や修正件数で示します。減らせる時間と実際に減る支払いを分け、無理に人件費削減へ置き換えないでください。

この記事の内容をもとにした、編集部からの提案です。
小さな改善でも提案書は必要ですか?

承認や担当調整が必要なら、一枚の記録が役立ちます。影響の小さい日常の変更まで大きな資料にせず、変更内容と判断を後から確認できる量にします。

この記事の内容をもとにした、編集部からの提案です。
SOURCES & EDITORIAL NOTE

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