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NRR(純収益維持率)は、既存顧客からの継続収益が、一定期間でどれだけ維持・拡大したかを示す指標です。解約・減額による減収と、追加契約などによる増収の両方を計算に含めます。
GRR(総収益維持率)は、既存顧客からの継続収益のうち、解約・減額後に残った割合を示す指標です。追加契約などによる増収は計算に含めません。
「継続収益」は、サブスクリプションの月額料金など、契約に基づいて繰り返し得られる売上です。どちらの指標も、集計期間の初めから契約していた顧客を対象にします。
たとえば、月初に契約していた顧客の月額売上が合計100万円あったとします。その月に解約で20万円、プランの変更で10万円減り、別の既存顧客の追加契約で20万円増えました。NRRは、100−20−10+20=90万円なので90%。GRRは追加契約の20万円を足さず、100−20−10=70万円なので70%です。
この例では、解約・減額で30万円減ったことがGRRに表れ、既存顧客からの追加契約20万円も含めた結果がNRRに表れます。新しく契約した顧客の売上は、どちらにも入れません。ここからは架空の5社の契約表で、足す金額・引く金額と計算手順を確認します。
この記事の目次
NRRは純収益維持率、GRRは総収益維持率
NRR(純収益維持率)は、既存顧客からの継続収益が、一定期間でどれだけ維持・拡大したかを示す指標です。NRRはNet Revenue Retentionの略です。期間初めの売上から解約・減額分を引き、既存顧客の追加契約などによる増額分を足して、期間初めの売上で割ります。増額分が減収分を上回れば、100%を超えます。
GRR(総収益維持率)は、既存顧客からの継続収益のうち、解約・減額後に残った割合を示す指標です。GRRはGross Revenue Retentionの略です。期間初めの売上から解約・減額分を引き、期間初めの売上で割ります。増額分を足さないため、最大値は100%です。
両者の違いは、既存顧客の増額分を含めるかどうかです。NRRでは既存顧客全体の売上の維持・拡大を、GRRでは解約・減額による売上の損失を確認できます。新しく契約した顧客の売上は、どちらにも含めません。
この記事では、継続収益を月額に換算したMRR(Monthly Recurring Revenue)で計算します。年額12万円の契約なら月額1万円相当です。入金額ではなく、契約に基づく月額売上を同じ基準で比べます。
月初100万円から解約20万円・減額10万円が発生し、既存顧客の追加契約で20万円増えた場合、NRRは90%、GRRは70%です。次の契約表で、どの金額を計算に含めるかを見ていきます。
計算前に、解約・減額・増額・新規契約を分ける
表では税や一時的な導入費を除き、同じ基準の月額契約だけを扱います。A〜D社は月初からの顧客、E社は月の途中で契約した新規顧客です。
月初の既存顧客の売上は100万円。解約20万円、減額10万円、増額20万円です。月末の会社全体の売上は120万円ですが、そのうち30万円は新規のE社から来ています。既存顧客だけなら90万円です。
この段階で合計が合わない場合、計算式へ進む前に、顧客IDの重複や契約の計上日を確認します。請求書の入金日だけで並べると、年払い、未入金、請求の遅れなどが混ざることがあります。今回知りたい契約ベースの金額と、実際の入金は分けて扱います。
| 顧客 | 月初の月額 | 月末の月額 | 今回の集計 |
|---|---|---|---|
| A社 | 40万円 | 60万円 | 20万円の増額 |
| B社 | 30万円 | 20万円 | 10万円の減額 |
| C社 | 20万円 | 0万円 | 20万円の解約 |
| D社 | 10万円 | 10万円 | 変化なし |
| E社 | 0万円 | 30万円 | 新規なので維持率から除外 |
同じ契約データで計算:NRR90%、GRR70%
NRRは「月初の売上-解約-減額+増額」を月初の売上で割ります。この例では、(100-20-10+20)÷100=90%。最初からいた顧客の売上が、全体で10%減ったことになります。
GRRは増額を足さず、「月初の売上-解約-減額」を月初の売上で割ります。(100-20-10)÷100=70%。月初100万円のうち、解約・減額で30万円減り、70万円が残ったことを表します。
NRRとGRRの差である20ポイントは、この例では増額分の寄与です。 90%から70%へ「20%減った」と言うと、割合の計算と混ざります。会議ではパーセントとパーセントポイントを区別すると、話が通じやすくなります。
NRRは増額が大きければ100%を超えます。GRRはこの定義では増額を含めないので100%を超えません。GRRが100%を超えたら、新規や増額を入れていないか、分母と分子の期間が合うかを確認してください。

NRRとGRRを一緒に見ると、何が分かるか
もしA社の月末契約が60万円ではなく100万円になったら、増額は60万円です。NRRは130%へ上がります。それでもB社の減額とC社の解約は変わらないので、GRRは70%のままです。
このケースで「顧客維持は順調」とだけ報告すると、B社とC社に起きた問題が見えなくなります。大口顧客への販売はうまくいっていても、別の顧客群では使いこなせず離れているかもしれません。
ただし、GRRが低い理由も、この数字だけでは決まりません。商品が合わなかったのか、事業の終了なのか、価格変更なのかは契約記録と聞き取りで確かめます。数字は問題の場所を探す入口であって、理由の代わりにはなりません。
Excelで計算するときは、金額と対象を先にそろえる
最初は表計算で十分です。顧客ID、月初月額、月末月額、新規・既存の区分、減額理由を列にします。継続顧客について、月末が月初を下回った分を減額、契約がゼロになった分を解約として分けます。
別の集計欄へ「月初100、解約20、減額10、増額20」と入力したなら、NRRは「=(100-20-10+20)/100」、GRRは「=(100-20-10)/100」です。実務では数値を直接書く代わりに、集計セルを参照します。表示形式をパーセントにし、計算自体にさらに100を掛けないようにします。
月初がゼロの顧客群は、この式では計算できません。「0%」と表示すると維持に失敗したように見えるので、「対象なし」や「計算対象外」とします。エラーを隠すための0への置き換えは避けます。
Excelの表や参照式に慣れていない場合は、まず今回の5社だけで合計を合わせてください。何千行もの実データを入れる前に、E社が除外されるか、A社の増額がGRRへ入らないかを確認するのが近道です。
月次・年次と、顧客数の維持率の違い
月次NRRと年次NRRは、期間の長さが異なります。月次の数字を単純に12倍して年次へ変換することはできません。毎月の顧客群の変化や契約の動きがあるからです。比較資料には、対象顧客と始点・終点を一緒に書きます。
顧客数の維持率も別の指標です。この例ではA〜Dの4社のうち、残ったのは3社なので75%。GRR70%と違っても、計算間違いではありません。契約金額の重みが入るかどうかが違います。
通貨の変動、休止からの復帰、従量課金の扱いも、会社ごとの集計ルールをそろえる必要があります。特に「新規」「復帰」「増額」の分類を途中で変えると、同じ名前の指標でも比較しづらくなります。変更する場合は適用日を残し、過去の数字との違いを説明します。
計算が合わないときに確認する契約と計上期間
集計担当と営業でNRRが違ったら、最初に「どの顧客を、いつの金額で比べたか」を確認します。請求書には年払い、一時的な導入費用、税、返金などが混ざることがあります。その月に入金された金額をそのまま継続売上にすると、契約の維持とは別の動きを数えてしまいます。
たとえば月額10万円から15万円へ変わった契約で、変更月に一部の日数だけ追加請求された場合です。請求額の増分と、変更後の月額差5万円は一致しないことがあります。契約の月額換算を比べるのか、その期間に認識する売上を比べるのかを社内で決め、計算の途中で切り替えないようにします。
確認表には顧客ID、期首の対象額、増額、減額、解約、期末の対象額、変更理由を残します。期末額が『期首+増額−減額−解約』と一致しなければ、その行を確認します。新規顧客の売上は別表へ分けます。解約後の再契約や為替変動の扱いも、使う会計・分析方針に合わせて決めてください。
報告では率だけを見せず、対象期間と対象顧客数、減額・解約の金額を添えます。『NRR90%だから悪い』と一言で片付けず、どの契約が減って、理由がわかっているかへ進むためです。数値の定義を資料に一行残すだけでも、翌月の比較や担当者の交代がずっと楽になります。
解約・減額・増額の内訳から改善を考える
NRRとGRRを報告するときは、数値、主な増減、その後に確かめることの順で伝えます。この例なら「NRR90%、GRR70%。A社の増額があった一方、B社の減額とC社の解約で月初売上の30%を失った。B社の利用状況とC社の解約理由を確認する」です。
増額した顧客にしか目を向けないと、同じ解約が続いても気付けません。反対に、すべての解約を現場の努力不足と決めつけるのも早計です。対象顧客の選び方、導入時の説明、利用後の支援を分けて考えます。
支援の内容を考えるなら、カスタマーマーケティングの進め方へ。契約時期ごとの利用の違いを調べたいなら、コホート分析の読み方へ進むと、次の問いがはっきりします。
まず月初の顧客一覧を用意し、月末までの解約・減額・増額・新規契約を分けてみてください。計算結果と各社の増減理由を一緒に残すと、翌月の比較にも使えます。
よくある疑問を、ここで。
使い始める前に、気になるところから。
NRRは100%を超える?
既存顧客の増額が解約・減額を上回れば超えます。新規顧客の売上を足して超えた場合は、ここで説明したNRRとは違う集計です。対象となる月初の顧客を固定してください。
月次NRRを12倍すれば年次になる?
なりません。期間の途中で顧客や契約が変わるため、年の始点にいた顧客の契約を終点まで追います。月次と年次を比べる資料には、対象と期間を明記します。
契約が減った月に、営業と顧客支援のどちらへ相談しますか?
減額した理由によります。B社が使いこなせていないなら導入支援、必要な機能が足りないなら商品担当、契約範囲の見直しなら営業との確認が必要です。NRRやGRRだけでは担当は決まりません。減った顧客の契約変更理由を確認し、わかった事実から対応先を決めてください。
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