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CAC回収期間は、顧客を獲得するために使った費用を、その顧客から得る粗利益で取り戻すまでの期間の目安です。粗利益は、売上からサービスの提供原価を引いた金額です。
たとえば、1社との契約を得るために広告や営業へ30万円を使ったとします。毎月の売上が5万円、提供原価が1万円なら、粗利益は月4万円です。30万円÷4万円=7.5か月が回収期間の目安になります。毎月同じ粗利益が続くと仮定した計算です。
この記事では、獲得費用に何を含めるか、計算式、途中解約した場合、年払いの入金との違いを、架空の契約例で確認します。
この記事の目次
CACは、ひとり・1社を獲得するための平均費用
CACはCustomer Acquisition Costの略です。対象期間の顧客獲得費用を、その費用に対応する新規顧客数で割って求めます。たとえば獲得費用300万円、新規顧客10社なら、1社あたり30万円です。
費用に広告費だけを入れるのか、営業やマーケティングの人件費、制作費、ツール費なども入れるのかで数字が変わります。広告費だけの数字を、全費用を含む他社のCACと同じものとして比べないでください。
今月使った広告費が来月以降の契約につながる商売もあります。費用を使った月と契約した月を機械的に割るだけでは、実態からずれる場合があります。契約までの期間を踏まえ、集計ルールを説明できる状態にします。
CAC回収期間の計算式と、7.5か月になる例
単純化した式は「CAC ÷ 1社あたり月額粗利益」です。月額粗利益は、平均月額売上に粗利益率を掛けて求めます。粗利益率は、売上から提供に直接かかる原価を引いた粗利益が、売上に占める割合です。
CAC30万円、月額売上5万円、粗利益率80%なら、月額粗利益は4万円。30万円÷4万円で7.5か月です。売上だけで割った6か月より長くなります。一定の契約額と粗利益が続くと仮定した目安です。

| 項目 | 架空の数値 | 計算 |
|---|---|---|
| 1社あたり獲得費用 | 30万円 | 300万円÷10社 |
| 1社あたり月額売上 | 5万円 | 契約データから集計 |
| 粗利益率 | 80% | 同じ基準で原価を集計 |
| 月額粗利益 | 4万円 | 5万円×80% |
| CAC回収期間 | 7.5か月 | 30万円÷4万円 |
年払いの入金時期と、粗利益による回収の違い
年払いで60万円を先に受け取った場合、現金は早く入ります。しかし、今後1年間サービスを提供する費用も発生します。先に入金されたことと、利益で獲得費用を回収したことは同じではありません。
資金繰りを見る表では入出金の時期、収益性を見る表では売上と原価の対応を確認します。両方必要ですが、同じグラフに説明なしで混ぜると判断を誤ります。
年額の平均売上を式へ入れるなら、結果の単位も年になります。月数で知りたい場合は月額へそろえます。「5万円」と「50000円」が同じ表に混ざる単位の誤りにも注意してください。
途中解約した場合の回収額を計算する
7.5か月という目安は、その間ずっと4万円の月額粗利益が得られる仮定です。3か月で終了すれば、得た粗利益は12万円にとどまります。この例では獲得費用30万円を回収していません。
継続期間や追加契約が大きく変わる場合は、実際の顧客群の累積粗利益を追う方法も検討します。平均だけを見ると、長く続く顧客が短期解約を覆い隠す可能性があります。
解約や減額が増えていないかはNRRとGRR、契約時期ごとの違いはコホート分析と合わせて確認します。獲得費用の改善と継続の改善は、分けて見る必要があります。
表計算では、前提を隣の列へ書く
練習用の表では、B2に300000、B3に50000、B4に80%を入れ、B5を「=B2/(B3*B4)」とすると7.5が得られます。B4へ80と入れると100倍違う計算になるため、パーセントの入力を確認します。
隣の列に、費用の範囲、対象顧客、期間、粗利益率の算出元を書きます。計算式だけ正しくても、広告費だけのCACと全原価を含む月額粗利益を説明なく組み合わせると、比較が難しくなります。
新規顧客がゼロ、または粗利益がゼロ以下の場合、通常の回収月数として解釈できません。エラーを0か月へ置き換えると「すぐ回収できる」と誤読されるので、計算対象外や回収できない前提として表示します。
顧客の種類ごとに、費用と粗利益を比べる
小規模企業と大企業では、契約額、営業の工数、導入支援の費用が違う場合があります。全体の平均がよくても、一部の売り方で回収に長くかかっていることがあります。
分類するときは、費用の配分ルールも必要です。広告費だけ細かく分け、人件費を無視すると、営業の負担が大きい顧客群を有利に見せてしまうかもしれません。配分できない費用は、その限界を記録します。
何か月なら必ず健全、という基準を一律に当てはめないでください。契約の継続性、粗利益率、資金の余裕、販売方法で意味が変わります。自社の過去と同じ定義で比べるところから始めます。
10社分の契約で計算する、回収期間と資金繰り
月額5万円の契約を10件獲得したら、月の売上は50万円です。獲得費用が300万円なら『6か月で回収』と計算したくなりますが、それは売上だけで割った数字です。サービス提供にかかる費用を除いた粗利益が月40万円なら、回収の目安は7.5か月になります。
ここで粗利益率80%を使うなら、何を売上原価に含めたかも確認します。サーバー費用、提供担当の人件費、外部への支払いなど、サービスの種類や社内の会計方針で整理が変わります。別の部署が違う原価の範囲を使っていると、同じ契約でも回収期間が変わります。
また、年額を先に受け取る契約では、入金は早くても、後の期間に提供する費用が残っています。CAC回収期間は、いつ現金が増減するかを示す資金繰り表の代わりにはなりません。売上・粗利益で見る回収と、請求・入金・支払いの日程を分けて確認します。
実務の報告では、対象の顧客群、獲得費用の範囲、月額換算売上、粗利益率、契約継続の前提を書きます。平均値だけでなく、高い支援コストがかかった顧客や短期解約があった顧客を確認すると、何を直すべきか見えます。
回収を短くしたいからと価格を上げたり広告を止めたりする前に、原因を分けます。獲得費用が高いのか、単価が低いのか、提供費用が大きいのか、継続しないのか。それぞれ必要な対応が違います。数字は一つでも、打ち手まで一つに決まるわけではありません。
回収期間を改善する4つの確認点
獲得費用を下げる、対象に合う顧客へ届ける、提供原価を見直す、必要な価値に応じて契約を設計する、といった方向があります。ただしサポートを削って粗利益を上げても、解約が増えれば回収が悪化する場合があります。
まず費用、顧客数、月額粗利益のどこが変わったかを分けます。その後、GTM戦略やPLG・SLGの選び方へ戻り、売り方と顧客の負担が合っているかを考えます。
報告するときは「7.5か月です」だけで終わらず、「この費用範囲と粗利益率で、契約が続くと仮定した場合」と添えます。短い数字に見えても、前提まで説明できることが大切です。
よくある疑問を、ここで。
使い始める前に、気になるところから。
CACは広告費だけで計算してよい?
広告費だけの指標として使うなら、その範囲を明示します。営業・制作・人件費などを含むCACとは値が違うため、そのまま比較しないでください。期間と新規顧客の対応も確認します。
何か月なら健全?
契約の継続性、粗利益、資金の余裕、売り方で変わります。一律の数値を合否にせず、同じ定義で過去や顧客群を比較します。回収前の解約も合わせて確認してください。
回収期間が長い顧客は、全部やめた方がよいですか?
回収期間だけでは判断できません。長く継続し追加契約がある顧客と、途中で解約しやすい顧客では結果が違います。契約期間、支援にかかる費用、解約、入金の時期も見ます。一方、将来の継続を楽観的に置いて、現在の資金の負担を無視しないことも必要です。
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