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上司に説明されている間、「また怒られるかも」と思うと、話が頭に入ってこない。聞き直すのが怖くて、分からないまま進めてミスをし、また叱られる。萎縮して仕事が覚えられない人の多くは、この悪循環の中にいます。
この記事では、悪循環を止めるための聞き方とメモの取り方を説明します。2026年9月26日に確認した厚生労働省の資料も参考にしています。
この記事の目次
結論:萎縮の悪循環は「聞き方・メモ・確認」で止められる
萎縮して仕事が覚えられないのは、能力が足りないからではありません。緊張していると、聞いた内容を覚えておく余裕がなくなりがちです。悪循環のどこか1か所を止めれば、少しずつ覚えられるようになります。
悪循環の段階ごとの止め方は、表「悪循環の段階と止め方」のとおりです。
| 段階 | 起きていること | 止め方 |
|---|---|---|
| 説明を聞くとき | 緊張して頭に入らない | メモを取り、最後に復唱する |
| 分からないとき | 聞き直すのが怖く、そのまま進める | 質問をまとめ、案を添えて聞く |
| 作業するとき | 手順があいまいでミスが出る | メモを手順書に清書しておく |
| ミスをしたとき | 報告が遅れて強く叱られる | 事実・影響・対策の順ですぐ伝える |
失敗への不安を抱える人は、少なくない
厚生労働省の令和6年の労働安全衛生調査では、20〜29歳で仕事に強いストレスがある人のうち、38.7%が仕事の失敗・責任の発生などを挙げていました。
怒られることやミスへの不安は、珍しいものではありません。萎縮してしまう自分を責めるより、不安があっても覚えられる方法を身につけることに気持ちを向けましょう。
萎縮の悪循環は、こうして起きる
萎縮による悪循環は、次のような流れで起きます。自分がどの段階で止まっているかを確かめてください。
- 怒られるのが怖くて緊張する:説明の途中で「また叱られる」と考えてしまう。
- 説明が頭に入らない:聞いたはずなのに、後で思い出せない。
- 聞き直せずに進めて、ミスをする:分からない所をそのままにしてしまう。
- ミスを叱られ、さらに緊張する:次の説明でも、もっと萎縮する。
4つのうち、自分で変えやすいのは2と3です。説明の聞き方と、分からない所の聞き方を変えるだけで、流れは弱まります。
説明を受ける前に、準備をしておく
説明を受ける前の数分の準備で、緊張はかなり和らぎます。何を教わるのかが分かっていれば、話の途中で置いていかれにくくなるからです。
- 前に教わった手順書を見返す:今日の説明とつながる所を確かめておく。
- 聞きたいことを先に書いておく:説明の最後に確かめる質問を用意する。
- メモ帳とペンを手元に置く:慌てて探さなくて済むようにする。
準備をしている姿は、上司からも前向きに見えます。緊張していても、準備があれば落ち着いて聞けます。
聞きながら取るメモは、単語だけでいい
緊張していると、きれいなメモを取る余裕はありません。説明を聞いている間は、単語や数字だけを書き留め、あとで清書する前提で構いません。
- 聞いている間:手順の順番に、単語と数字だけを書く。「①ログイン ②請求タブ ③日付を入れる」のように。
- 説明が終わった直後:分からなかった所に「?」をつける。
- その日のうちに:単語をつないで、番号つきの手順に清書する。
清書するとき、覚えていない所が見つかったら、翌日まとめて聞き直せば大丈夫です。聞き直した答えも、同じ手順書に書き足しておきます。
説明の最後に、自分の言葉で復唱する
説明が終わったら、「確認させてください。〇〇を開いて、△△を入れて、最後に□□を押す、で合っていますか」と、手順を自分の言葉で言い直します。
復唱すると、聞き違いや抜けがその場で見つかります。上司にとっても、どこまで伝わったかが分かるので、後で「言ったよね」と叱ることが減ります。
復唱は、怖くても1回だけでいいので試してください。聞き直すより短く、相手の時間もとりません。
質問は「まとめて・案を持って」聞く
分からない所を1つずつ何度も聞くと、相手の作業を止めるのが気になり、聞くこと自体が怖くなります。聞き方を変えると、相手の負担も自分の怖さも小さくなります。
- 急ぎでない質問は、3つほどまとめる:相手の手が空いた時に、一度に聞く。
- 自分の案を添える:「〇〇だと思うのですが、合っていますか」と聞く。
- 調べた所を伝える:「手順書のここまでは分かりましたが、この場合が分かりません」と言う。
案を添えた質問は、相手が「はい」か「違う」で答えられるので、短く済みます。
そのまま使える聞き方の例文
聞くときの言葉を決めておくと、声をかける怖さが小さくなります。よく使う場面の例文を、囲み「聞き方の例文」にまとめました。
最初のうちは、例文をメモ帳に書いておき、見ながら話して構いません。
メモを、自分用の手順書に育てる
清書したメモは、そのまま自分用の手順書になります。同じ仕事をするたびに手順書を見ながら進め、つまずいた所を書き足していきましょう。
手順書があると、「前に教わったのに忘れた」という不安が減ります。覚えることより、手順書を見ればできる状態を先に作ると、緊張していても仕事が進みます。
手順書は、上司に一度見てもらうのもおすすめです。「この手順で合っていますか」と見せれば、間違いを早めに直してもらえます。
聞くタイミングを決めておく
「今聞いていいのか」と迷う時間も、萎縮を強めます。聞くタイミングを、あらかじめ決めておきましょう。
急ぎでない質問は、朝の始業のすぐ後や、昼休みの前など、相手が区切りのよい時間にまとめて聞きます。急ぎの質問は、「急ぎで1点だけ確認させてください」と前置きして、すぐに聞いてください。
15分考えても分からないことは、それ以上一人で抱えないのが目安です。迷い続けるより、聞いたほうが早く、ミスも防げます。
ミスをしたら、事実・影響・対策の順ですぐ伝える
萎縮していると、ミスの報告を後回しにしがちです。報告が遅れるほど小さなミスが大きくなり、叱られ方も強くなります。
伝える順番は、事実・影響・対策です。例えば「〇〇の数字を1か所間違えて入力しました。まだ外には出ていません。正しく直し、次からは入力の後に見直します」のように伝えます。
報告の型と文例は、報連相ができない・怖い人へでも詳しく説明しています。
叱られた後の、気持ちの切り替え方
叱られた後は、頭の中で何度も言われたことを思い出し、次の説明でもっと萎縮してしまいがちです。叱られたら、言われた内容と、言われ方の強さを分けて考えてください。
直すべきなのは内容の部分です。「次からは入力の後に一度見直す」のように、次の行動を1行でメモに書けば、それ以上は気にしなくて構いません。
言われ方の強さまで自分の責任として抱えると、気持ちがもちません。1行のメモを書いたら、深呼吸をして次の作業に移りましょう。
1日の終わりに、覚えたことを確かめる
帰る前の短い時間で、その日に覚えたことを手順書に書き足します。次の3つを確かめるだけで十分です。
- 今日、新しく覚えた手順はあるか:手順書に書き足す。
- 分からないまま残っている所はあるか:明日まとめて聞く質問にする。
- 同じミスをしなかったか:した場合は、理由を一言添えておく。
毎日少しずつ手順書が厚くなっていくと、「覚えられない」という不安が、「ここまでは覚えた」という実感に変わっていきます。
上司に「萎縮してしまう」と伝えてもいい
緊張して説明が頭に入らないことを、上司に正直に伝えるのも一つの方法です。伝え方を工夫すれば、上司も教え方を変えやすくなります。
例えば「説明をしていただくとき、緊張してしまって一度で覚えきれないことがあります。メモを取りながら聞き、最後に復唱させていただいてもいいですか」のように伝えます。
自分の工夫とセットで伝えると、言い訳ではなく、覚えるための相談として受け取ってもらえます。上司が忙しそうなときは、面談の場で伝えると落ち着いて話せます。
半年たっても覚えられないときに見直すこと
入社や異動から半年たっても覚えられないと、焦りが強くなります。ただ、原因は自分だけとは限りません。次の3つを見直してください。
- 仕事の量:覚える前に次々と新しい仕事を任されていないか。
- 教え方:一度しか説明されず、手順書やマニュアルがない状態ではないか。
- 自分の状態:眠れない、食べられないなど、心や体に不調が出ていないか。
仕事の量や教え方が原因なら、上司に相談して変えてもらう必要があります。時期の目安は、新人が仕事できないのはいつまで?で説明しています。
叱り方が度を越しているときは、覚え方の問題ではない
厚生労働省のハラスメント対策の資料は、人格を否定するような言動や、他の人の前での大声での威圧的な叱責の繰り返しを、パワーハラスメントの「精神的な攻撃」に当たりうる例として挙げています。
新卒で採用した人に必要な教育をしないまま、到底できない目標を課して厳しく叱ることは、「過大な要求」の例として挙げられています。こうした状態で萎縮するのは、あなたのせいではありません。
当てはまりそうなら、日時・言われた内容・その場にいた人を記録し、社内の相談窓口や総合労働相談コーナーに相談してください。
眠れない・食べられない日が続くときは
怒られることへの不安から、眠れない、食べられない、出社の前に体調が悪くなる日が続くときは、覚え方の工夫より先に、体と心を休めることが大切です。
覚えられないことが昔から続いていて、仕事に大きな支障があるときも、自分で原因を決めつけず、医療機関に相談してください。厚生労働省のこころの耳には、働く人の相談窓口と、医療機関を探すページがあります。
仕事の基本を、1冊で学び直すなら
メモの取り方や質問の仕方のような仕事の基本は、職場でまとめて教わらないことも多いものです。基本を一度学び直したい人は、新人向けのビジネス書を1冊読むのも方法です。
例えば、岩瀬大輔さんの『入社1年目の教科書』(ダイヤモンド社、2011年)は、入社1年目の人に向けて仕事の基本を説明する本です。職場で教わることと合わせて読むと、自分に足りない所が見えてきます。
悩みに合わせて読みたい記事
仕事の遅さで落ち込んでいる人は、仕事が遅いと落ち込む人へで、作業の分け方と途中の報告の仕方を説明しています。
朝から出社がつらい日が続く人は、仕事に行きたくない朝はどうする?も読んでください。
3人の例で考える
よくある3つの状況で、悪循環のどこを止めるかの例を挙げます。
- 説明を聞いても、後で思い出せない人:単語だけのメモを取り、説明の最後に復唱する。その日のうちに清書する。
- 聞き直すのが怖くて、分からないまま進める人:質問を3つまとめ、案を添えて聞く。
- 大勢の前で毎日強く叱られる人:覚え方の問題ではない。記録を残し、相談窓口に話す。
3人とも、悪循環の1か所を止めることで、少しずつ流れが変わっていきます。一度に全部を変えようとせず、今週は復唱だけ、来週は質問のまとめ方、のように1つずつ試してください。
萎縮の悪循環を止める確認リスト
最後に、今日から見直せる項目をまとめます。
- 説明を聞きながら、単語と数字だけのメモを取った
- 説明の最後に、手順を自分の言葉で復唱した
- その日のうちに、メモを番号つきの手順書に清書した
- 質問はまとめて、自分の案を添えて聞いた
- ミスは、その日のうちに事実・影響・対策で伝えた
- 人格を否定する叱り方が続くなら、記録して相談した
よくある疑問を、ここで。
使い始める前に、気になるところから。
仕事で萎縮してしまうのはなぜですか?
前に強く叱られた経験や、ミスへの不安が重なると、「また怒られる」と身構えてしまうためです。緊張していると説明が頭に入りにくく、ミスが増えてさらに萎縮する悪循環に入りがちです。聞き方とメモの工夫で、その流れは弱められます。
仕事でキャパオーバーのサインは?
覚える前に次々と新しい仕事を任され、手順書を作る時間もない状態が続くことです。厚生労働省の調査でも、強いストレスの内容で最も多いのは仕事の量(43.2%)でした。仕事と締め切りを書き出して、上司に相談してください。
仕事が全然覚えられないのは病気ですか?
この記事では医学的な判断はしません。緊張や仕事の量、教え方が原因のことも多くあります。覚えられないことが昔から続き仕事に大きな支障があるときや、心身の不調があるときは、自分で決めつけず医療機関に相談してください。
同じことを何度も聞くと、嫌がられませんか?
聞いたことを手順書に清書し、「以前教わった〇〇の、この部分がまだあいまいです」と、どこが分からないかをはっきりさせて聞けば、嫌がられにくくなります。分からないまま進めてミスをするより、聞くほうが相手の負担も小さく済みます。
萎縮してしまう職場は、辞めたほうがいいですか?
聞き方やメモの工夫を試しても変わらず、人格を否定される叱り方が続くなら、覚え方の問題ではありません。記録を残して相談窓口に話し、心身がつらいときは休むことを優先してください。
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出典と、この記事について
公式資料や、記事で参照した発表・報道をまとめています。仕様や料金は、利用する前に最新の案内をご確認ください。
- 厚生労働省:令和6年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況(新しいタブで開きます)
- 厚生労働省:職場におけるハラスメント対策マニュアル(新しいタブで開きます)
- こころの耳(厚生労働省):相談窓口案内(新しいタブで開きます)
- 厚生労働省:総合労働相談コーナーのご案内(新しいタブで開きます)
- 国立国会図書館サーチ:入社1年目の教科書(岩瀬大輔、ダイヤモンド社、2011年)(新しいタブで開きます)
確認した内容と条件は本文に記載しています。結果や使い勝手は、資料や環境によって異なります。編集方針を読む




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