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上司から「来月から別の部署に行ってもらえないか」と言われた。今の仕事にやっと慣れたのに、家族の事情もあるのに。そう思っても、断るのはわがままではないかと迷ってしまう人は多いはずです。
この記事では、2026年9月26日に確認した厚生労働省の資料をもとに、異動を断れる場合・断りにくい場合の考え方と、角が立たない伝え方を説明します。
この記事の目次
結論:わがままかは理由しだい。打診の段階なら伝えてよい
異動したくないと伝えること自体は、わがままではありません。大事なのは、理由と、伝える時期です。
育児・介護・体調など、生活や健康に関わる理由は、会社が知っておくべき事情です。一方、「今の仕事が好き」「新しい部署が不安」といった理由だけなら、断るより条件を相談するほうが通りやすくなります。段階ごとの伝えやすさは、表「段階ごとの伝えやすさ」のとおりです。
| 段階 | 伝えやすさ | 伝え方 |
|---|---|---|
| 打診(まだ決まっていない) | 伝えやすい | 事情と希望をはっきり伝える |
| 内示(ほぼ決まっている) | 伝えにくい | 事情を伝え、条件や時期を相談する |
| 辞令(正式に決まった) | とても難しい | 事情があれば人事に相談する |
配置転換は、多くの人にとってストレスの種
厚生労働省の令和6年の労働安全衛生調査では、仕事に強いストレスがある人の19.8%が、役割・地位の変化など(昇進・昇格・配置転換など)を挙げていました。
慣れた仕事や人間関係から離れることに不安を感じるのは、自然なことです。その不安をどう伝えるかで、会社の受け取り方は大きく変わります。
打診・内示・辞令の違い
異動の話は、会社によって違いますが、一般に打診・内示・辞令の順に進みます。どの段階かによって、伝えられることが変わります。
- 打診:会社が本人の意向を聞く段階。事情を伝えれば、考え直してもらえる余地がある。
- 内示:正式な発表の前に、本人に知らせる段階。ほぼ決まっていることが多い。
- 辞令:正式に決まった異動の命令。変えるのはとても難しい。
伝えるなら、打診の段階がいちばんの機会です。話を聞いたら、その場で答えず「少し考えさせてください」と伝え、事情を整理してから返事をしましょう。
断れる場合・断りにくい場合
一般に、就業規則に異動の定めがある会社で、業務の必要がある異動の命令を、好みだけを理由に断るのは難しいとされます。一方で、次のような事情は、会社に伝えて考慮を求める理由になります。
- 育児や介護がある:転勤で子育てや家族の介護が難しくなる。
- 体調を崩している:通院が続いている、医師から働き方の注意を受けている。
- 働く場所や仕事の内容を限定して雇われている:雇用契約書に勤務地や職種が書かれている。
自分の場合に断れるかどうかは、雇用契約書と就業規則の内容、事情の重さで変わります。判断に迷うときは、人事か総合労働相談コーナーに相談してください。総合労働相談コーナーは、配置転換の相談も受けています。
雇用契約書と就業規則で確かめる3つのこと
異動を断れるかを考える前に、自分の雇用の条件を確かめておきましょう。見るのは、入社のときの雇用契約書(労働条件通知書)と、会社の就業規則です。
- 働く場所の定め:勤務地が「本社のみ」などと限定されているか、「会社が定める場所」となっているか。
- 仕事の内容の定め:職種が限定されているか、会社の指示で変わることがあると書かれているか。
- 異動や転勤の定め:就業規則に、業務の都合で異動を命じることがあるという定めがあるか。
勤務地や職種が限定されているなら、その範囲を超える異動には、本人の同意が必要になる場合があります。書類が見当たらないときは、人事に写しをもらってください。
返事をする前に準備すること
異動の話を受けたら、まず返事の期限を確かめます。期限までに、次のことを準備しておくと、落ち着いて伝えられます。
家族がいる人は、家族と話して、異動で生活がどう変わるかを確かめます。そのうえで、伝えたい事実・影響・希望をメモに書き出してください。
返事は口頭だけで終わらせず、話した内容を短くメールでも送っておくと、後で行き違いが起きにくくなります。
育児・介護があるときは、法律の配慮を知っておく
育児・介護休業法の第26条は、会社が働く人を転勤させるとき、育児や介護が難しくなる人について、その状況に配慮しなければならないと定めています。
厚生労働省のパンフレットは、配慮の例として、子育てや介護の状況を把握すること、本人の意向をくみ取ること、住む場所が変わる場合に子育てや介護の代わりの手段があるかを確かめること、の3つを挙げています。
育児や介護の事情があるなら、遠慮せずに伝えてください。誰が、どんな世話を、どのくらいの頻度でしているかを具体的に伝えると、会社も配慮を考えやすくなります。
体調を崩しているときの伝え方
通院している、心や体の調子を崩しているときは、異動で環境が大きく変わることが負担になる場合があります。体調の事情は、伝えにくくても伝えるべき大切な情報です。
伝えるときは、病名まで話す必要はありません。「通院を続けていて、今は環境が大きく変わると体調に影響が出るおそれがあります」のように、影響を中心に伝えます。
主治医に働き方について意見をもらえるなら、それを会社に伝えると話が進みやすくなります。
わがままに見えない理由の伝え方:事実・影響・希望
異動したくない理由は、感情だけで伝えると「わがまま」と受け取られがちです。次の3つの順で伝えると、事情として受け取ってもらいやすくなります。
- 事実:「平日の夕方に、親の通院の付き添いをしています」のように、具体的に伝える。
- 影響:「新しい部署は勤務時間が遅く、付き添いができなくなります」のように、異動で何が起きるかを伝える。
- 希望:「今の部署に残るか、勤務時間を調整していただけないでしょうか」のように、どうしてほしいかを伝える。
希望は1つに絞らず、「残る」「時期をずらす」「条件を変える」のように複数あると、会社も答えやすくなります。
打診の段階で伝える例文
打診の段階で伝えるときの例文を、囲み「打診の段階の伝え方の例文」にまとめました。自分の事情に合わせて直して使ってください。
その場で答えにくいときは、「一度持ち帰って、明日お返事してもいいですか」と時間をもらって構いません。
内示の後に伝えるとき
内示の後は、異動がほぼ決まっているため、「断る」より「事情を伝えて条件を相談する」形にします。伝えるなら、できるだけ早く、上司と人事の両方に伝えてください。
例えば「内示をいただいた件で、ご相談があります。家族の介護の事情があり、〇〇の勤務時間では続けることが難しいです。勤務時間の調整か、時期の変更をご検討いただけないでしょうか」のように伝えます。
伝えた内容と、相手の返事は、日付とともにメモに残しておきます。後で話が食い違ったときの手がかりになります。
断る代わりに、条件を相談する
好みや不安が理由の場合は、「行きません」と断るより、条件を相談するほうが受け入れられやすくなります。代わりの提案の例は、表「代わりの提案の例」のとおりです。
会社にとっても、異動をやめるより条件を変えるほうが決めやすいことがあります。自分が何なら受け入れられるかを、先に考えておきましょう。
| 提案 | 伝え方の例 | 向いている理由 |
|---|---|---|
| 時期をずらす | 今の仕事の区切りまで待ってほしい | プロジェクトの途中 |
| 期間を決める | 2年など期間を決めてほしい | 長く離れるのが不安 |
| 勤務の条件を変える | 勤務時間や在宅勤務を調整してほしい | 家庭の事情 |
| 引き継ぎの期間をとる | 1か月ほど兼務させてほしい | 今の仕事の責任 |
言わないほうがいいこと
異動を断りたい気持ちが強いと、つい言ってしまいがちな言葉があります。次のような伝え方は、事情があっても「わがまま」と受け取られやすくなります。
- 異動先の人や部署の悪口:「あの部署は評判が悪いので」など。
- 感情だけの理由:「とにかく行きたくないです」だけで終える。
- 辞めることをちらつかせる:「異動なら辞めます」と交渉の材料にする。
本当に辞めることを考えているなら、それは交渉ではなく、別に落ち着いて判断することです。
異動を受けたほうがよい場合もある
今の職場の人間関係がつらい、仕事が合わないと感じているなら、異動は環境を変える機会にもなります。会社を辞めずに、仕事や人を変えられる方法だからです。
新しい仕事を覚えるのは大変ですが、経験の幅が広がることは、将来のキャリアにとってもプラスになります。断る前に、異動で得られることと失うことを、紙に書き出して比べてみてください。
嫌がらせのような異動のときは
仕事を外して長い期間、別室に隔離する、能力や経験とかけ離れた簡単な仕事だけをさせる。厚生労働省は、こうした扱いを、パワーハラスメントの「人間関係からの切り離し」や「過小な要求」の例として挙げています。
嫌がらせが目的と思われる異動や扱いを受けているなら、日時・言われたこと・命じられた仕事を記録し、社内の相談窓口や総合労働相談コーナーに相談してください。
異動を断れないなら、辞めるべき?
異動を断れなかったとき、「それなら辞める」と考える人もいます。ただ、異動先で働いてみたら思ったより合っていた、ということもあります。
急いで決めず、異動先で3か月ほど働いてから考える方法もあります。辞めるかどうかの判断の仕方は、仕事を辞めたいのは甘え?で説明しています。
心や体に不調が出ているなら、辞めるかより先に休むことと相談を優先してください。こころの耳には、働く人のための相談窓口があります。
異動した後に、新しい職場になじむコツ
異動が決まったら、最初の1か月は、仕事の成果より、人と仕事の流れを覚えることに集中します。前の部署のやり方と比べたくなっても、まずは新しい部署のやり方を知ることから始めましょう。
新しい上司には、「前の部署では〇〇を担当していました。こちらで早く役に立てるよう、最初に覚えることを教えてください」と伝えると、話を始めやすくなります。
反対に、異動したいときは
今の部署を離れたくて異動を希望するのも、わがままではありません。希望するときも、伝え方の順番は同じで、事実・影響・希望で伝えます。
例えば「今の部署で〇〇の経験を3年積みました。次は△△の仕事で経験を広げたいと考えています。来年度の異動の希望として、ご検討いただけないでしょうか」のように、前向きな理由を中心に伝えると通りやすくなります。
人間関係のつらさが理由なら、それも大切な事情です。一人で抱えず、人事に相談してください。
迷ったときの相談先
異動の話は、上司だけでなく人事の担当者にも相談できます。上司に話しにくいときは、人事から始めても構いません。
自分の場合に断れるのか、会社の対応が妥当なのかを知りたいときは、総合労働相談コーナーに相談できます。予約なし・無料で、面談か電話で専門の相談員が対応します。
3人の例で考える
よくある3つの状況で、どう伝えるかの例を挙げます。
- 親の介護があり、転勤の打診を受けた人:打診の段階で、介護の頻度と転勤で起きることを具体的に伝え、今の勤務地での継続を相談する。
- プロジェクトの途中で異動の内示を受けた人:区切りまでの時期の変更か、引き継ぎの期間を相談する。
- 新しい部署が不安なだけの人:断るより、期間を決めた異動や、引き継ぎの期間を相談する。
3人とも、理由を事実として伝え、代わりの提案を添えることで、話し合いが進みやすくなります。結果がどうであれ、事情を伝えたこと自体が、次の話し合いの土台になります。
異動の話を受けたときの確認リスト
最後に、異動の話を受けたときに確かめる項目をまとめます。
- 今が打診・内示・辞令のどの段階かを確かめた
- 雇用契約書と就業規則で、勤務地や異動の定めを確かめた
- 異動したくない理由を、事実・影響・希望で書き出した
- 育児・介護・体調の事情は、具体的に伝えた
- 断る代わりの提案(時期・期間・条件)を用意した
- 伝えた内容と返事を、日付つきでメモした
よくある疑問を、ここで。
使い始める前に、気になるところから。
人が次々に辞めていく職場の特徴は?
仕事の量が偏る、相談しにくい、人の入れ替えのたびに配置が大きく変わる、といった職場では、残った人の負担が増えやすくなります。異動の話が多すぎると感じるときは、人事に今後の配置の方針を聞いてみてください。
異動希望や異動を断りたいのは、わがままですか?
理由しだいです。育児・介護・体調など、生活や健康に関わる理由は、会社が知っておくべき事情で、わがままではありません。好みや不安だけが理由なら、断るより条件を相談するほうが通りやすくなります。
異動したくないのですが、どうしたらいいですか?
まず、今が打診・内示・辞令のどの段階かを確かめます。打診の段階なら、事実・影響・希望の順で事情を伝えてください。内示の後は、時期や条件の相談に切り替えます。
異動してほしくないと思われる人は、どんな人ですか?
今の部署で代わりがいない仕事を担っている人や、引き継ぎに時間がかかる仕事をしている人は、残ってほしいと思われやすいものです。ただし、それを理由に異動を断れるとは限らないので、事情は具体的に伝えてください。
異動を断ったら、解雇されますか?
断ったことでどう扱われるかは、就業規則、雇用契約、断った理由などで変わり、一概には言えません。不安なときは、断る前に人事や総合労働相談コーナーに相談してください。
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出典と、この記事について
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- 厚生労働省:令和6年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況(新しいタブで開きます)
- 厚生労働省:育児・介護休業法のあらまし(転勤についての配慮・法第26条)(新しいタブで開きます)
- 厚生労働省:総合労働相談コーナーのご案内(新しいタブで開きます)
- 厚生労働省:職場におけるハラスメント対策マニュアル(新しいタブで開きます)
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